
このコラムの要点(目次)
「確定申告を数年していない。このまま5年、7年待てば逃げ切れるのだろうか?」
結論として、無申告のまま時効(除斥期間)の成立を待つのは、極めてリスクが高く、現実的ではありません。
税務署は個人の資産状況を網羅的に把握しており、時効直前に調査が入るケースが大半だからです。
本記事では、無申告にまつわる時効の法的仕組み(5年・7年の違い)、税務調査が入った場合のリスク、そして今すぐ自主的に動くことでどれだけペナルティを減らせるかについて、法律の専門的見地から徹底解説します。
無申告とは、本来納めるべき税金があるにもかかわらず、法定申告期限までに申告を行わない状態を指します。
個人の場合、主に以下のようなケースで確定申告の義務が生じます(所得税法)。
「バレなければ大丈夫」という油断は禁物です。
無申告が税務署に把握された場合、本来納めるべき「本税」に加え、以下のペナルティが課されます。
■無申告加算税
申告しなかったことへの罰金
■延滞税
利息に相当する遅延損害金
■重加算税
悪質な隠蔽があった場合の重い罰金
これらが数年分積み重なると、当初の税額の1.5倍〜2倍近い金額を一括で請求されることも珍しくありません。
一般的に「時効」と呼ばれますが、税法上は「賦課権(ふかけん)の除斥期間(じょせききかん)」と「徴収権の消滅時効」という2つの概念が存在します。
税務署が申告漏れを指摘し、税金を課すことができる期間(除斥期間)のカウントは、「法定申告期限の翌日」からスタートします。
「少額だから見逃される」「現金手渡しだからバレない」という認識は危険です。
国税局・税務署は「国税総合管理システム(KSK)」を運用しており、支払調書、銀行口座の動き、不動産の登記情報などを紐づけて管理しています。
実務上、逃げ切れる確率は限りなく低いです。
無申告の状態が続くと、税務署は過去に遡って調査を開始します。
通常、税務調査は直近3年分をチェックすることが多いですが、無申告や不正が見つかった場合は5年、さらに悪質な場合は7年前まで遡って調査が行われます(国税通則法第70条)。
申告期限を過ぎてからの期間が長いほど、延滞税の負担が雪だるま式に増え続けます。
「昔のことだから資料がない」は通用せず、推計課税(近隣の同業者の水準などから税務署が勝手に税額を決めること)が行われ、実態よりも高い税金を課されるリスクもあります。
税金の時効(徴収権の消滅時効)が成立するには、以下の厳しい条件をクリアし続ける必要があります。
税務署側も、無申告の納税者をそのまま放置してしまえば租税徴収の機会を失うこととなるため、時効を迎える前に必ず督促状を送ったり、財産調査を行ったりします。
これにより徴収権の時効は「更新(リセット)」または「完成猶予(ストップ)」されることになります。
この場合、再び時効期間がカウントされ直すため、逃げ切ることは極めて困難です。
また、税務署の督促を無視し続けると差押えなどの強制徴収に発展する恐れがあるため、速やかな対応が不可欠です。
「私の場合は何年で時効?」という疑問に対し、国税通則法に基づく正確な期間を解説します。
| 状況 | 時効 (除斥期間) |
内容 |
|---|---|---|
| 期限内申告の計算ミス等 | 3年 | 申告はしたが計算に誤りがあった場合(原則) |
| 無申告(意図的でない) | 5年 | うっかり忘れていた、知識がなかった場合 |
| 贈与税の無申告 | 6年 | 贈与税特有の期間 |
| 悪質な無申告(脱税) | 7年 | 「偽りその他不正の行為」があった場合 |
インターネット上で「時効は3年」という情報を見かけることがありますが、これは主に「期限内に申告書を提出していたが、税額が少なかった場合(過少申告)」の原則的な更正期間を指します。
申告書自体を出していない「無申告」の場合、原則は5年となります。
したがって、無申告の方が「3年経ったから安心」と考えるのは致命的な間違いです。
無申告における原則的な時効期間は5年です(国税通則法第70条第2項)。
単純な失念や、計算間違いによって申告していなかった場合は、申告期限の翌日から5年が経過すれば、税務署は税金を課すことができなくなります。
しかし、ここで重要なのが「偽りその他不正の行為」の有無です。
税務署が「これは単なるうっかりミスではなく、税金を逃れるための不正だ」と認定すれば「7年」の枠組みに移行します。
以下のような事実がある場合、時効期間は最長の7年に延長されます(国税通則法第70条第4項)。
これらは「仮装・隠蔽(かそう・いんぺい)」行為とみなされ、重加算税(最大40%)の対象となるだけでなく、場合によっては刑事告発され、逮捕されるリスクすらあります。
「副業だから」「少額だから」という言い訳は、脱税の認定においては通用しません。
無申告が発覚した際に課される「金銭的なダメージ」について具体的に解説します。
本税以外に支払うペナルティは想像以上に高額です。
ペナルティの種類と税率は、「自主的に申告したか」「税務調査で指摘されたか」「悪質か」によって大きく異なります。
| 税金の種類 | 税率 | 適用条件 |
|---|---|---|
| 無申告加算税 | 5% | 更正又は決定を予期してものではなく、かつ調査通知前に自主的に申告した場合(国税通則法66条6項) |
| 10% / 15% | 調査通知後に申告した場合(金額による) | |
| 15% / 20% | 調査で指摘を受けてから申告した場合 | |
| 重加算税 | 40% ※過少35% |
隠蔽・仮装があった場合(最も重い) |
税務署から連絡が来る前に「自主的に期限後申告」を行えば、無申告加算税は5%に軽減されます。
一方で、調査が入ってからでは15%〜20%、さらに悪質なら40%の重加算税が課されます。
つまり、「バレるのを待つ」という選択は、経済的損失を最大化させてしまうだけです。
延滞税は、納付期限の翌日から完納するまでの日数に応じてかかる「利息」です。
税率は年によって変動しますが、原則として以下のようになります(令和4年以降の目安)。
数年分の無申告をまとめて支払う場合、この延滞税だけで数十万円〜百万円単位になることも珍しくありません。
個人における延滞税は、自己破産しても免責されない(消えない)強力な債務である点にも注意が必要です。
実際には時効成立を阻止するために、税務当局が取る行動が存在します。
税額が確定した後、それでも納税しない場合は「督促状」が送付されます。
法律上、督促状が送付されると、その時点で「税金を集める権利(徴収権)」の時効はリセットされます。
つまり、「税務署からの郵便物を無視して未開封のままにしておく」行為は無意味です。
書類が到達した時点で、法的効力が発生しているからです。
これらのアクションが行われると、税額が確定し、そこから新たに5年間の徴収権の時効がスタートします。
「住所を変えれば逃げられる」「海外にいれば大丈夫」という考えも危険です。
住民票を移さなくても、実際の居所や勤務先、取引先を調査官は徹底的に調べ上げます。
「無申告がバレたら、どのような調査が行われるのか?」
不安を和らげるために、一般的な税務調査の流れと、納税者が取るべき対策を紹介します。
通常、税務調査は電話での事前通知から始まりますが、無申告や不正が疑われる場合(無予告調査)は、ある朝突然、調査官(国税調査官)が自宅や事務所にやってくることもあります。
無申告の調査では、調査官から「なぜ申告しなかったのか」「隠していたのではないか」と厳しく追及される可能性があります。
ここで不用意な発言をすると、重加算税(40%)の対象とみなされるリスクが高まります。
■ 領収書や通帳を可能な限り集める
■ 嘘をつかない
■ 税理士に立ち会いを依頼する
特に税理士や弁護士への依頼は、精神的な負担を減らすだけでなく、調査官との交渉(正当な経費の主張や、重加算税の回避など)において極めて有効です。
もし今、税務署からまだ連絡が来ていないのであれば、あなたにはまだチャンスがあります。
最悪の事態(重加算税や逮捕、社会的信用の失墜)を避けるための、具体的なアクションプランを提示します。
税務調査の連絡が来る前に、自ら申告を行うことを「自主申告」と言います。
自主申告を行えば、前述の通り無申告加算税は5%で済みます。
これは「反省して自ら正そうとする納税者」に対する法の温情措置です。
数年分の無申告を自力で処理するのは、知識面でも精神面でも非常にハードルが高い作業です。
「怒られるのではないか」と税務署に行きづらい方も多いでしょう。
無申告案件に強い税理士に相談するメリットは以下の通りです。
相談時は、「正直に全て話すこと」が大切です。
税理士には守秘義務があり、相談内容を勝手に税務署に通報することはありません。
本記事では、無申告の時効の仕組みとリスクについて解説しました。
「いつ税務調査が来るか」と怯えて暮らすよりも、今すぐ行動を起こして、クリーンな状態で再スタートを切ることが、精神的にも金銭的にも最善の選択です。
一人で抱え込まず、まずは無申告の対応実績が豊富な専門家の相談などを活用し、現状を整理することから始めてみてください。 あなたの勇気ある一歩が、解決への近道となります。
税理士法人羽賀・たちばなには、元国税専門官・元国税審判官の経験を持つ弁護士が在籍しています。
税務署の手口を熟知した専門家が、通常の税務調査から強制調査(査察)の対応まで、税務・法務の両面から貴社の利益と権利を守り抜きます。
『調査の連絡が来て不安だ』
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という方は、事態が悪化する前に、まずは当法人の法律相談・税務相談をご利用ください。