税務・会計・税金に関するコラム
2026.3.19

個人事業主の無申告とは?確定申告が必要なケース

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弁護士・税理士 橘髙 和芳

たちばな総合法律事務所  代表
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士

 大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
 近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

京都大学法学部在学中に司法試験現役合格。弁護士登録後、国税不服審判所(国税審判官 平成24年~同27年)を経て、現職。担当する企業法務案件が「金融・商事判例」など専門誌に掲載された実績。


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弁護士・税理士 山田 純也

たちばな総合法律事務所
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士

 大阪弁護士会所属/登録番号:38530
 近畿税理士会所属 税理士/登録番号:145169

東京国税局(国税専門官)で銀行/証券会社などの税務調査に従事。弁護士資格取得後、大阪国税不服審判所(国税審判官 平成25年~同29年)として国際課税、信託に係る案件、査察関連案件等に従事し、企業内弁護士を経て現職。

 

このコラムの要点(目次)

個人事業主の無申告とは?確定申告が必要なケース

個人事業主の「無申告」とは、本来提出すべき確定申告(または住民税申告など)を期限までに行っていない状態を指します。

納税額が発生しない年でも、制度上は申告が必要になるケースがあり、放置すると追徴課税や各種手続きでの不利益につながります。

この記事では、無申告の判断基準からペナルティ、控除の逸失、バレる理由、解消手順、時効の目安までを整理し、今すぐ取れる現実的な対応策を解説します。

1. 無申告の判断基準と申告が必要な税金

ご自身が「無申告」にあたるかを確認するには、まず「どの税金の申告が必要だったか」の特定が必要です。

個人事業主の申告義務は、所得額や取引形態によって決まります。
具体的には、以下の3つの税金について、それぞれ申告の要否を確認します。

  • 所得税(確定申告)
  • 住民税
  • 消費税

多くの方が混同しやすいのが、「売上(収入)」と「所得(利益)」の違いです。
確定申告が必要かどうかは、1年間(1月1日〜12月31日)の「売上」の多さではなく、「所得」の額で決まります。

以下の計算式で算出される「最終的に手元に残った金額(課税所得)」をもとに判断します。

売上(収入)- 必要経費 = 所得(利益)

所得(利益)- 各種控除 = 課税所得(税金が計算されるベース)

 

つまり、「売上が多いから申告が必要」「売上が少ないから申告は不要」と収入の額面だけで判断するのは危険です。
売上から経費と控除を差し引き、最終的に納めるべき税金が発生するかどうかが正しい判断基準となります。

また、無申告を放置すると、税金のペナルティが発生するだけでなく、国民健康保険料が高止まりしたり、ローン審査に必要な所得証明が発行できなかったりと、生活や事業経営にも悪影響が生じます。
税目ごとに申告の必要性を確認し、該当するものは早急に対処することが重要です。

1-1. 所得税の確定申告が必要になる目安

所得税の確定申告は、基本的に「最終的に納める所得税が発生するなら必要」です。
個人事業主の場合、事業所得は売上から必要経費を引いた利益がベースになり、そこから基礎控除などの所得控除を差し引いて課税所得を計算します。

令和2年分以降、基礎控除額は原則として48万円となっています。
つまり、事業所得が48万円以下であり、他に所得がない場合は、基本的に所得税の確定申告義務はありません(所得税法第120条)。

ただし、所得税が0円(または赤字)で申告義務がない年であっても、あえて確定申告をしておいた方がよい理由があります。
主な理由は以下の2点です。

将来の税金を安くする権利を得られる(青色申告の場合)
赤字の年に申告をしておけば、その赤字を翌年以降の黒字から差し引いて、将来の税金を安くできる権利(純損失の繰越控除)が得られます。これは申告をしてはじめて効力を持ちます。

税務署による「不利な課税」を防げる
無申告を放置すると、税務署が売上や口座の入金履歴だけを見て所得を推計し、実際にかかった必要経費を認めてくれないまま、高い税金をかけられるリスクがあります。

 

このように、「納税が必要かどうか」の判断が曖昧なラインのときほど、しっかりと帳簿をつけて申告し、ご自身の正しい所得金額を確定させておくのが最も安全です。

1-2. 住民税申告が別途必要になるケース

所得税の確定申告を提出すると、その情報が自治体に連携されるため、原則として住民税申告は別途不要です。
つまり「確定申告を出すかどうか」が、住民税手続きにも直結します。

所得税の確定申告をしない場合(所得が48万円以下など)でも、原則として1月1日時点の住所地の市区町村へ住民税申告が必要です(地方税法第317条の2
売上が少ない、赤字、所得税が0円見込みといった事情があっても、住民税の申告義務は生じます。

住民税が無申告だと、国民健康保険料の算定で「所得不明」と扱われ、軽減判定ができず保険料が高止まりすることがあります。
また、所得証明・課税証明の発行がスムーズにできず、保育・給付・各種手続きで不利になる可能性があります。

1-3. 消費税・インボイス制度と無申告の関係

消費税は、以下のいずれかに当てはまる「課税事業者」となった場合に、申告・納付の義務が生じます。

原則として、前々年の課税売上高が1,000万円を超えている場合
自ら課税事業者になることを選択している場合
インボイス制度で「適格請求書発行事業者」として登録している場合

 

消費税の無申告は、本来の税額に加算税や延滞税が上乗せされるため、非常に負担が重くなる税目です。
「売上として受け取った消費税を運転資金に使ってしまい、いざというときに納税資金が残っていない」という事態に陥りやすく、放置すると資金繰りが一気に悪化します。

インボイス制度により無申告の発覚リスクが上昇している
インボイス制度の導入により、消費税の無申告は税務署に把握されやすくなっています。

取引先(買手)は、自社の消費税負担を減らす(仕入税額控除を受ける)ために、あなたが発行したインボイス(適格請求書)の登録番号や取引金額を正確に処理して税務署に申告します。

つまり、あなた自身が申告をしなくても、取引先が提出したデータから「あなたの売上実態(第三者情報)」が税務署に筒抜けになる構造です。
以前よりも消費税の申告漏れが発覚するルートが増えているため、ご自身に申告義務があるかどうか、早急に要件の確認を行ってください。

2. 個人事業主が無申告のままだとどうなる?

無申告を放置すると、本来納めるべき税金に行政上のペナルティ(加算税・延滞税)が上乗せされ、支払総額が膨らみます
さらに悪質性が高い場合は重い処分につながる可能性もあります。
ここでは代表的なリスクの全体像を解説します。

2-1. 無申告加算税

無申告加算税は期限内申告をしなかった場合に課されるペナルティです。

放置した場合は原則として、納付すべき税額に対し、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%(令和6年以降、300万円超の部分は30%)の割合で加算される重い税です(国税通則法第66条)。

ただ、税務署から調査の事前通知が来る前に自主的に期限後申告をすれば、税率は5%に軽減されます。
そのため、「いつ、どの状況で申告するか」が非常に重要です。

実務的には、無申告が長引くほど資料が散逸し、正しい所得計算ができなくなるため、申告の精度が落ちてしまいます。
結果として「説明できない部分」が増え、追徴の余地を広げてしまいます。

2-2. 延滞税

延滞税は、法定納期限までに納付しない場合に日数に応じて発生する、利息に近い性格の税金です(国税通則法第60条)。
無申告のケースはそもそも納付も遅れやすく、延滞税が積み上がりやすいです。

延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヶ月を経過すると、さらに高い税率へと引き上げられます。

注意点は、延滞税は「申告したら終わり」ではなく、実際に納付した日まで発生することです。
加算税と別枠でかかるため、放置期間が長いほど二重に負担が増えます。
資金繰りが厳しいときほど先送りしがちですが、延滞税は時間がコストになる税目です。
まず申告して債務額を確定させ、支払い方法を相談する方が、総額を抑えやすくなります。

2-3. 重加算税

重加算税は、仮装・隠ぺいなど悪質性がある場合に、無申告加算税に代えて課され得る重い加算税です(国税通則法第68条)。
単なるミスや知識不足というより、「意図的に税負担を免れようとした」と評価される態様が問題になります。

無申告の場合の重加算税の税率は、原則として「納付すべき税額の40%」という非常に重いペナルティとなります。
過去5年以内に無申告加算税や重加算税を課されたことがある場合は、さらに10%加重されます。

典型例としては、売上の除外、架空経費の計上、二重帳簿の作成、入金口座の意図的な秘匿などが挙げられます。
こうした行為は後から修正しても記録が残りやすく、説明が困難になりやすいのが特徴です。

重加算税が絡むと金額面の打撃が大きいだけでなく、調査対応も厳しくなりがちです。
無申告を解消するなら、帳簿と証憑を正面から整え、誤りがあれば根拠を示して是正する姿勢が結果的にリスクを下げます。

2-4. 刑事罰の可能性

無申告は、行政上の追徴(加算税・延滞税)とは別に、悪質性や金額規模によっては刑事事件として扱われる可能性があります。
多くのケースは行政対応で収まりますが、刑事事件に発展する可能性もゼロではありません。

故意に確定申告書を提出せず、税を免れた場合(ほ脱罪)、所得税法第238条に基づき「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、またはその両方」が科される可能性があります。
単純な無申告(故意のほ脱とまでは言えない場合)であっても、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」の対象となり得ます。

刑事の論点では、意図の強さ(隠すための行動があるか)、継続性、金額、社会的影響などが重く見られます。
つまり、単に申告していない事実だけでなく、周辺行動の積み重ねが評価に影響します。
無申告に気づいた時点で、記録を整えて自主的に是正することが大切です。

3. 無申告で失う控除・制度

無申告によって、「罰金的な負担」が生じるだけでなく、本来受けられたはずの控除・還付・公的制度の恩恵も失ってしまいます

無申告の損失は、追徴課税のような目に見えるペナルティだけではありません。
本来は正しく申告していれば使えた控除や還付の機会を、自分から捨ててしまうことになります。

特に個人事業主は、税務上の優遇は「自動で適用」されず、帳簿の整備と申告手続きによって初めて成立するものが多いです。
申告がないと、権利だけが消えていく構造だと理解すると判断しやすくなります。

3-1. 青色申告特別控除を受けられない

青色申告特別控除は、一定の要件を満たすことで事業所得などから控除できる制度で、要件次第で控除額が大きく変わります租税特別措置法第25条の2)。

複式簿記による記帳を行い、期限内に申告をすれば最大55万円の控除が受けられます。
さらに、e-Taxによる電子申告等を活用すれば最大65万円の控除となります。
しかし、無申告(期限後申告)となってしまうと、この65万円・55万円の控除は受けられず、最大10万円の控除に減額されてしまいます。

無申告だと、青色申告のメリットである控除だけでなく、赤字の繰越(純損失の繰越控除)など将来の税負担をならす制度も活用しにくくなります
赤字の年ほど「税金がないから申告しない」となりがちですが、将来黒字になったときに効くのはむしろ赤字年の申告です。

3-2. 各種控除・還付を受けられない

医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、扶養控除などの所得控除や、税額控除は、申告して初めて反映されるものが多いです。
無申告のままだと、本来減らすことができたはずの税負担を軽減できません。

また、フリーランスの方などで、取引先から報酬を受け取る際に源泉徴収(税金の天引き)されている場合、確定申告をすれば払いすぎた税金が還付される(戻ってくる)可能性があります。
無申告は「追徴される」だけでなく、「返してもらえるはずのお金を受け取れない」という直接的な損害を生みます。

控除や還付は、領収書・明細・控除証明書などの証拠が揃っていてこそ成立します。
時間が経つほど資料は紛失しやすく、損をしないためにも早期の資料整理が大切です。

3-3. 国民健康保険の軽減措置に影響する

国民健康保険料には、所得が一定以下の世帯を対象とした「保険料の軽減措置」がありますが、無申告の場合はこの恩恵を一切受けられません。

自治体は申告された所得データをもとに軽減の判定を行うため、未申告の状態では「所得ゼロ」であっても軽減が適用されず、本来より高い保険料が請求されてしまいます。
これが、無申告によって発生する「税金以外の直接的な金銭損失」です。

申告を行うことで保険料が正しく減額される
「所得税が0円だから申告不要」と判断せず、正しく確定申告(または住民税申告)を行ってください。
所得情報が自治体に伝わることで、以下のメリットが生じます。

保険料の再計算
所得に応じた軽減(7割・5割・2割など)が正しく適用され、保険料が安くなります。
還付の可能性
すでに高い保険料を支払っている場合、申告後に過払い分が還付されるケースもあります。

 

無申告の問題は、税金だけにとどまりません。
家計の固定費である「社会保険料」を適正化するためにも、早期の申告が不可欠です。

3-4. 融資・賃貸・ローン審査に影響する

無申告の状態では、確定申告書の控えや所得証明書といった「公的に収入を証明する書類」を発行できず、あらゆる審査において致命的に不利となります。

金融機関や不動産会社などの第三者は、書類上の数字でしかあなたの返済能力を判断できません。
どれほど事業の実態があり利益が出ていたとしても、公的な書類がなければ「客観的な証拠がない」とみなされ、審査の土俵にすら乗れないのが実務上の現実です。

「確定申告書の控え」は事業主の信用そのもの
将来の事業拡大や生活の安定において、確定申告は以下の場面で必須となります。

銀行融資・資金調達
銀行から融資を受ける際、過去数年分の確定申告書は必須書類です。継続的な申告は「計画的に納税し、返済能力がある」という裏付けとして重視されます。
法人成り(会社設立)
将来的に会社を設立する場合も、個人時代の申告実績が代表者の信用としてチェックされます。
住宅ローン・賃貸契約
収入の安定性を示す材料として、確定申告書の提出を求められるのが一般的です。

 

言い換えると、確定申告は単なる税務手続きではなく、社会的な「信用を積み上げる事務」といえます。
無申告期間があると、事業の成長局面での資金調達や、住宅の購入・賃貸といった生活上の選択肢が大きく狭まるリスクがあります。

4. 無申告が税務署にバレる主な理由

「申告していなければ分からない」は誤解で、税務署側は第三者情報や調査で取引実態を把握できます。
どのようにして税務署にバレるのかを知ることで、早期の自主申告が有利な理由も理解できます。

4-1. 支払調書・取引先情報で把握される

税務署は、取引先が提出する『支払調書』などの法定調書から、あなたの無申告を容易に把握できます。
報酬や外注費などを支払った取引先から税務署へ情報が提供・蓄積されるため、受け取った側(あなた)が無申告だと、データの不一致ですぐに発覚します。
とくに取引先が法人(企業・会社)である場合、彼らは適正に経費処理を行い、法定調書を税務署に提出しています。

国税庁のデータベース「KSKシステム(国税総合管理システム)」にはこれらの情報が集約されているため、容易に照合が可能です。
近年は振込記録や請求書管理の電子化も進み、取引の履歴が残りやすい環境です。
インボイス制度の運用が進むほど、取引先も適格請求書の要件確認や経理処理の整合性を重視するため、周辺情報から把握される機会も増えています。

「現金なら分からない」という発想も危険です。
現金でも、取引先の帳簿・仕入処理・経費処理の側から追えるため、受け取り側だけ無申告で通し続けるのは現実的ではありません。

4-2. 税務調査で発覚する

「申告をしていないから税務署に把握されない」というのは大きな誤解です。
むしろ無申告は、それ自体が税務調査のターゲットとなるリスクを格段に高めます。

税務署にとって無申告者は、申告済みの人に比べて「納税漏れが確実にある」状態に見えるため、調査によって確実に追徴税額(ペナルティ)が見込める対象として優先的に選ばれやすいためです。

「推計課税」による不利な税額決定のリスク

調査が始まると、税務署は通帳、請求書、領収書、契約書、さらにはSNSやメールのメッセージ履歴などを徹底的に確認し、過去の取引実態をひとつずつ再構成します。
この際、無申告者には以下の大きな弱点があります。

必要経費の否認
適切な帳簿(記帳)がない場合、実際にかかった経費であっても領収書が不十分であれば認められない可能性が高くなります。
推計課税の適用
経費が証明できない場合、税務署が同業他社の利益率などから所得を逆算する「推計課税」によって、実態よりも高い税額を一方的に決定されるリスクがあります。

取引先への調査から「芋づる式」に発覚する

また、あなた自身に直接調査が入らなくても、取引先への税務調査(反面調査)がきっかけで無申告が発覚するケースも非常に多いです。
事業は取引の連鎖で成り立っている以上、他者の帳簿には必ずあなたの名前や支払記録が残ります。
外部への情報を完全に遮断し、事業を続けることは事実上不可能です。

4-3. 第三者からの通報で発覚する

第三者からの情報提供がきっかけで、税務署が事実関係を確認するケースもあります。

元取引先や関係者など、取引を知る立場の人が情報を持っていることは珍しくありません。
国税庁のウェブサイトには「課税・徴収漏れに関する情報の提供」窓口が設置されており、誰でも匿名で情報提供が可能な仕組みになっています。

通報の内容がそのまま課税につながるわけではありませんが、調査のきっかけになる可能性はあります。

5. 無申告を解消する手順

無申告に気づいたら、放置せず「必要年分の申告」「納付(難しければ猶予相談)」の順で進めるのが現実的です。
追徴課税の負担を抑える観点でも早い対応が肝心です。

重要なのは「自己判断で放置しない」「年分と税目を間違えない」「支払いまで含めて計画する」の3点です。

5-1. まず税務署に相談する

最初に行うべきは、所轄税務署に相談して「何年分・どの税目・何を出す必要があるか」を確認することです。
ここを曖昧にしたまま作業を始めると、後で不足が見つかり二度手間になります。

特に、調査の事前通知が来る前に自主的に動くことは、ペナルティ面で有利になります。
相談した事実が免責になるわけではありませんが、放置よりもはるかに状況をコントロールしやすくなります。

もし税務署に直接相談することに抵抗がある、あるいは怒られそうで怖いといった悩みがある場合は、まず税理士事務所の無料相談などを利用することをおすすめします。

5-2. 期限後申告・修正申告の進め方

未提出の年分は期限後申告として提出します。
すでに提出した申告に誤りがある場合は修正申告になるため、まずは「未提出か、提出済みか」を年ごとに整理します。

進め方の基本は、資料収集からです。
通帳、請求書、領収書、クレジット明細、取引先からの入金一覧などを集め、売上と経費を年ごとに確定させて所得を計算します。

主な必要書類は以下の通りです。

身分証明書(マイナンバーカード等)
売上がわかるもの(請求書控、通帳、支払調書など)
経費がわかるもの(領収書、レシート、クレジットカード明細など)
控除を証明するもの(生命保険料控除証明書、医療費の領収書など)

 

その上で申告書を作成し、e-Tax・郵送・持参のいずれかで提出し、納付まで行います。
複数年をまとめて行う場合は、年度を分けて入力し、勘定科目や家事按分のルールを統一するとミスが減ります。

5-3. 税金を払えないときの相談(納付猶予・分割)

一括納付が難しい場合は、納付猶予や分割納付などの相談が可能です。
無申告のまま放置すると、延滞税が増え続け、差押えなどの手続きに発展するリスクも上がります。
早めに相談して、現実的な返済計画を示す方が、事業と生活を守りやすくなります。

相談時には、収支状況や資金繰り、生活費などの情報が求められることがあります。
通帳や月次の収支が整理されていると、交渉がスムーズになりやすいので、申告準備と並行して手元資金の見える化を進めておくと良いでしょう。

5-4. 会計ソフトや税理士を活用した負担の少ない申告方法

過去数年分の領収書を整理し、正確な帳簿を作成する業務は、専門知識がないと膨大な時間がかかります。
そのため、手作業にこだわらず便利なツールや専門家のサポートを利用するのが具体的な対処法となります。

近年は、銀行口座やクレジットカードと連携して自動で帳簿を作成してくれるクラウド会計ソフトが普及しており、これらを活用すれば過去分の計算も比較的簡単に完了できます。

また、自分で行うのが不安な場合や、本業の時間が削られてしまう場合は、税理士事務所へ記帳から申告までの代行を依頼するのもおすすめです。
税理士に依頼すれば、正しい知識に基づいた申告ができ、税務署とのやり取りも代理してくれます。
費用はかかりますが、専門家に依頼することで無申告加算税を最小限に抑え、正確な申告が可能です。
自力での対応が難しい場合は、無申告対応に強い税理士への相談を検討してください。

6. 無申告の時効とさかのぼり年数の目安

無申告の対応でよく出る疑問が「何年までさかのぼられるのか」です。
一般論として、税務署が税額を更正・決定できる期間(除斥期間といいます)には限度があります(国税通則法第70条)。

原則: 法定申告期限から5年
悪質な場合(仮装・隠ぺい等): 法定申告期限から7年

 

ただし、時効を当てにして7年間逃げ切ろうと放置するのは極めて危険です。
税務署が無申告を把握する機会は増えているため、時効による逃げ切りは困難です。

7. 税務調査が入りやすい個人事業主の特徴

税務署は限られた調査員で効率的に追徴課税を行うため、「申告漏れの可能性が高い先」をデータに基づいて優先的に選別しています。
無申告はそれだけで「多額の追徴が見込める」と判断され、調査対象として極めて目立ちやすい状態ですが、それ以外にも調査リスクを跳ね上げる具体的な特徴があります。

税務署が「怪しい」と目を付ける3つのポイント

利益率が不自然、または急激な変動がある
同業他社の平均と比べて利益率が極端に低い場合、売上の除外や架空経費の計上が疑われます。また、前年と比較して急激に数字が変動しているケースも、その理由を確認するために調査の対象となりやすいです。
現金取引が多く、お金の流れが見えにくい
飲食店や建設業など、現金での受け渡しが多い業種は、銀行振込と違って「証拠が残りにくい」と考えられています。そのため、税務署は「売上を抜いているのではないか」という疑いを持ち、現金の管理状況を厳しくチェックします。
高額な外注費があるのに、契約書などの証憑(証拠書類)が不十分
外注費は、知人の名前を借りた「架空外注費」として利益を圧縮する手口によく使われます。契約書や請求書、納品物などの証拠(証憑)が揃っていない場合、税務署は真っ先にこの実態を疑います。

 

「説明できない数字」が調査を呼び込む

調査はランダムに選ばれるのではなく、申告内容や外部情報から「事実とのズレ」が予測されるところに優先して入ります。
日頃から請求書や領収書などの証憑を整え、数字の根拠を即座に説明できる状態にしておくことが、最大の調査対策となります。

8. よくある質問

無申告にまつわる誤解が多いポイントをQ&A形式で解説します。

8-1. 売上ゼロ・赤字でも申告は必要?

所得税が0円になる売上ゼロや赤字の年でも、申告が必要なケースはあります。
所得税の確定申告が不要でも、自治体への住民税申告が必要になることが多いためです。

また、青色申告で赤字を繰り越したい場合(純損失の繰越控除)は、その赤字の年に申告しておくことが将来の節税につながります。
売上ゼロや赤字は「申告しなくていい年」ではなく、「申告しておくと将来が楽になる年」になり得ます。

結論は、所得税・住民税・青色の要件をセットで見て判断します。税額が0円でも手続き上のメリットがあるかを確認し、迷うなら毎年申告して権利を残すのが無難です。
なお、簡易な白色申告であっても帳簿の保存義務はあるため注意が必要です。

8-2. 年収103万円以下なら申告しなくていい?

「103万円」は主に給与所得者(アルバイトやパート)の話で、個人事業主にはそのまま当てはまりません。

給与所得者の場合、年末に行われる年末調整によって税金が精算されるため、他に収入がなければ確定申告は不要となるケースが多いです。

しかし個人事業主は、収入ではなく所得(収入-必要経費)を基準に、基礎控除などの所得控除を差し引いて課税関係を判断します。
たとえば売上が103万円以下でも、経費がほとんどなく所得が高ければ、所得税が課税される可能性があります。

9. まとめ:無申告は早めに申告・相談してリスクを減らす

無申告は追徴課税だけでなく、控除の逸失や社会的信用の低下など影響が広範です。
できるだけ早く「申告」「納付(困難なら猶予相談)」を済ませることが大切です。

個人事業主の無申告は、所得税・住民税・消費税など税目ごとに論点があり、放置すると加算税・延滞税だけでなく、控除や還付の機会、国保の軽減、信用面まで影響が広がります。

第三者情報や税務調査によって取引実態は簡単に把握されます。
だからこそ、早い段階で自主的に動くほど、負担とリスクを抑えやすくなります。

脱税、無申告、税務調査や査察の問題は、税理士法人羽賀・たちばなへご相談ください。
当事務所には、元国税審判官・元国税専門官の経歴をもつ税理士・弁護士が在籍しており、問題解決までのフルサポートが可能です。

また、個別の有料相談も実施中です(1万1000円/30分)。
まずは、ご事情を丁寧にお伺いし、具体的な解決策をご提案いたします。
ぜひお気軽にお問い合わせください。

  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「税理士法人 羽賀・たちばな」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。