
このコラムの要点(目次)
税金の世界では『知らなかった』は通用しません。
安易な判断が『脱税』とみなされ、重いペナルティを受けるリスクがあります。
この記事では、「節税」「脱税」、そして誤解されやすい「租税回避」の3つの違いを、国税通則法などの法的根拠や具体的な事例を交えながら徹底的に解説します。
多くの人が混同しがちな「節税」「脱税」、そして「租税回避」という3つの違いについて、定義と法律的な位置づけを解説します。
節税とは、税法(所得税法や法人税法など)で認められている優遇措置や控除制度を適切に活用することで、税金の負担を軽減する「合法的な」行為です。
これは納税者に与えられた正当な権利(規定に基づく権利)であり、賢明な経営判断です。
脱税とは、売上を隠したり、実際には存在しない架空経費を計上したりするなど、意図的に事実を偽り、不正な手段を用いて納税義務を免れようとする「違法行為」です。
法的には、国税通則法第68条における「事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装」する行為が該当します。
脱税と判断される最大のポイントは「故意(わざとやったかどうか)」です。
脱税は、単なるルール違反ではなく、場合によっては所得税法違反として刑事罰(拘禁刑や罰金)の対象となる重大な犯罪です。
租税回避とは、法律の条文上は違法ではないものの、税法の立法趣旨(法律が作られた目的)に反するような異常な取引形態を用いて、不当に税負担を軽減しようとする行為です。
「形式的には合法」ですが、税務署長には「同族会社の行為計算の否認(所得税法第157条)」などの権限があり、実質的に不当だと判断されれば課税処分を受ける可能性があります。
例えば、海外のタックスヘイブンを利用した複雑なスキームなどが挙げられますが、近年では税制改正により包囲網が狭まっており、リスクが極めて高い行為です。
| 項目 | 節税 | 脱税 | 租税回避 |
|---|---|---|---|
| 合法性 | 完全に合法 | 完全に違法(犯罪) | 形式は合法だが否認リスク大 |
| 手口 | 法の規定通りに優遇措置を利用 | 仮装・隠蔽(売上除外・架空経費) | 法の抜け穴・想定外のスキーム |
| リスク | なし(むしろ推奨) | 重加算税、刑事罰、逮捕 | 税務調査での否認、追徴課税 |
| 具体例 | 青色申告、iDeCo、小規模企業共済 | 売上隠し、領収書偽造 | ペーパーカンパニー、過度な海外移転 |
「これは経費にできるのかな?」という疑問は尽きないものです。
ここでは、個人事業主が直面しやすい具体的なケースを「セーフ(節税)」か「アウト(脱税)」かで判定し、その根拠を解説します。
下記のケースは、課税要件を満たした正当な手続きです。
枠組みを活用し節税することができます。
青色申告は、国が推奨する最も基本的な節税策です。
複式簿記による記帳と期限内申告を行うことで、最大65万円の所得控除が受けられます(電子帳簿保存またはe-Tax利用時)。
所得税率20%(年収700万円~900万円程度の方)・住民税率10%の人であれば、約19.5万円の税金が安くなる計算です。
つまり、青色申告の手間をかけるだけで、年間約20万円もの現金を合法的に手元に残せるということです。
これは単なる事務作業の対価としては極めて大きな「特典」であり、活用しない手はありません。
生計を一にする家族(配偶者など)が事業に従事している場合、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出することで、その給与を全額経費にできます(所得税法第57条)。
ただし、従業員としての勤務実態がない場合や、仕事内容に比べて不当に高額な給与は否認される可能性があるため注意が必要です。
中小企業倒産防止共済制度を活用して、所得控除を受けることができます。
共済制度は国が「倒産リスクへの備え」として推奨しているものであり、掛金の全額(月額最高20万円)を必要経費に算入」し、所得を抑えることができます。
但し、解約手当金は収益(雑収入)となるため、あくまで課税の繰り延べ効果である点を理解しておく必要があります。
以下の行為は「節税」ではありません。
「仮装・隠蔽(かそう・いんぺい)」を伴う脱税行為として、重い処分が待っています。
2-2-1.売上を隠す・少なく申告する
現金で受け取った売上を帳簿に載せない「売上除外」や、売上の一部を翌年に回す「期ズレ」の操作は脱税行為です。
税務調査では、銀行口座の動きだけでなく、取引先への「反面調査」によって、あなたの売上が正確かどうか照合されます。
「バレないだろう」という甘い考えは通用しません。
これらは悪質な「仮装」行為です。
特に、実体のない外注費の計上は、消費税の不正還付の手口としても厳しくマークされています。
家族旅行の費用を出張費としたり、自宅の家賃全額を経費にしたりすることは認められません。
事業とプライベートが混在する支出(家事関連費)は、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる部分に限り経費となります(所得税法第45条)。
合理的な基準で按分していない場合、税務調査で否認されます。
脱税が発覚した場合、単に未払いの税金を払えば済むわけではありません。
「本来払うべき税金」に加えて、高額なペナルティが課されます。
ペナルティとして課される税金を「附帯税」と呼びます。
申告の誤りの程度によって、以下の加算税が上乗せされます。
特に重加算税は、脱税に対する非常に重い行政処分です。
さらに、過去5年以内に無申告加算税等を課されたことがある場合、税率が10%加重される措置もあります。
税金の納付期限(法定納期限)の翌日から完納する日までの日数に応じ、利息に相当する「延滞税」がかかります。
脱税が数年後に発覚した場合、この延滞税だけでも莫大な金額になります。
脱税で追徴課税を受けると、その事実は決算書や納税証明書に反映されるため、金融機関に知られることがあります。
「粉飾決算をする事業者」「コンプライアンス意識が低い」とみなされ、融資の引き上げや新規融資の停止につながるリスクがあります。
これは資金繰りが悪化している企業には致命的です。
極めて悪質な脱税(巨額の脱税や、計画的な隠蔽工作など)の場合、国税局査察部(マルサ)による強制調査が行われ、検察庁に告発される可能性があります。
確定判決が出れば、「10年以下の拘禁刑(旧懲役刑)もしくは1,000万円以下の罰金(またはその併科)」という重い刑事罰が科されます(所得税法第238条など)。
また、脱税によって得た利益は没収されるだけでなく、社会的信用も完全に失うことになります。
3-4.時効は何年?
税務調査で遡れる期間(時効)は、通常は5年ですが、偽りその他不正の行為(脱税)があった場合は7年間まで遡ることができます(国税通則法第70条)。
「昔のことだから大丈夫」は通用しません。
リスクを冒さず、法律の範囲内で手元資金を最大化する「賢い節税」をご紹介します。
これらは国の制度をフル活用するものです。
基本中の基本ですが、領収書の紛失や計上漏れを防ぐことが最大の節税です。
特に「家事按分」を正しく行うことで、地代家賃、水道光熱費、通信費の一部を経費化できます。
「事業のために使った」という実態と、それを証明する記録があれば、堂々と経費に計上しましょう。
前述の通り、青色申告にするだけで最大65万円の控除が得られます。
複式簿記のハードルは高いと思われがちですが、現在はクラウド会計ソフトを使えば、簿記知識がなくても自動で帳簿作成が可能です。
所得控除メリット
非課税メリット
「経営者の退職金制度」です。
掛金(月額1,000円〜7万円)は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から引かれます。
年間最大84万円の控除を作ることができ、受け取り時にも退職所得としての優遇が受けられます。
実質2,000円の負担で、寄付額に応じた税額控除が受けられ、返礼品ももらえる制度です。
節税(税金が減る)というよりは「税金の前払い」に近いですが、可処分所得(使えるお金やモノ)を増やすという意味で、非常に人気のある制度です。
「悪気はなかった」という計算ミスも、場合によっては重い処分につながります。
日頃から以下の3点を守りましょう。
決算期にまとめてやろうとすると、記憶が曖昧になりミスが多発します。
日々記帳し、帳簿上の数字と、手元にある実際の現金(有高)が一致しているか確認しましょう。
帳簿の数字には、必ず裏付けとなる「証拠(エビデンス)」が必要です。
領収書がない経費は、原則として認められません。
消費税の仕入税額控除を受けるためにも、インボイス制度に対応した請求書の保存が必須となります。
「高額な交際費」や「海外視察費」、「相続によって取得した資産の減価償却」など、判断が難しいケースは自己判断せず、税理士に相談しましょう。
専門家の意見を聞いて処理したという事実は、万が一税務調査で見解の相違が生じた際にも、悪質な隠蔽ではないことの証明(処分の軽減材料)になります。
節税と脱税は、紙一重のように見えて、その本質は全く異なります。
節税は、知識を武器にあなたの資産を守る「権利」です。
一方、脱税は、一時の利益のために将来のすべてを危険に晒す「犯罪」です。
補助金の不正受給なども含め、不正はいずれ必ず発覚します。
「実現」していない利益を計上する必要はありませんが、発生した利益は適正に申告し、納税する必要があります。
「過去の申告に誤りがあるかもしれない」「税務署から連絡が来て不安だ」という方は、一人で悩まず、直ちに税務の専門家である税理士に相談してください。
税務調査の通知が来る前であれば、自主的に修正申告を行うことで、ペナルティ(加算税)を大幅に軽減できます。
税理士は、あなたを監視する存在ではなく、あなたの権利を守るためのパートナーです。プロの力を借りて、クリーンで安心できる事業運営を目指しましょう。
税理士法人羽賀・たちばなでは、日々の会計業務のサポート(顧問税理士)から、税務調査・国税局による査察対応、刑事事件の対応までおこなっています。
元国税専門官、元国税審判官の経歴を持ち、税理士実務をおこなう弁護士が在籍しています。
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