
このコラムの要点(目次)
法人税・消費税・地方税の申告義務は、黒字・赤字にかかわらず発生します。
無申告を放置すれば、無申告加算税や重加算税などのペナルティに加え、社会的信用の失墜により経営が立ち行かなくなる恐れがあります。
この記事では、法人が無申告(期限後申告)の状態になった際に直面しうるリスクやデメリット、そしてそれらを避けるための具体的な対策を解説します。
現在無申告状態にある法人がとるべき適切なステップと、経営リスクを最小限に抑える方法を理解しましょう。
法人として事業を運営する場合、法律(法人税法第74条など)により定められた期間内に確定申告を行う義務があります。
法人の確定申告期限は、原則として事業年度終了から2カ月以内です。
以下の申告を行い、必要に応じて税金を納付しなければなりません。
赤字(欠損)の場合でも申告が不要になるわけではありません。
法人住民税の均等割(年間約7万円〜)は赤字でも発生します。
赤字申告を行なえば、将来の利益と相殺できる「欠損金の繰越控除」の適用を受けることができます。
もし無申告の状態が長引けば、事後処理として複数年分を一度にまとめて申告(期限後申告)しなければならなくなり、膨大な事務手間や追徴課税が生じる懸念があります。
法律で定められた手続きを遵守することが、法人としての信用や経営を守る上でも極めて重要です。
個人の確定申告とは異なり、法人の申告は貸借対照表や損益計算書など、添付すべき書類が複雑です。
だからといって放置することは許されません。
自社で申告作業が難しい場合、税理士に依頼する必要があります。
法人が無申告になるのは、単なる税金の支払いを回避したいという意図だけではありません。
手続きの不備や「赤字だから関係ない」という錯覚など、さまざまな要因が考えられます。
特に、設立直後の会社設立・起業から間もない時期は、売上確保に必死で経理が後回しになりがちです。
また、「税理士への報酬(料金)が払えない」という資金的な不安から、誰にも相談できずに放置してしまうケースも見られます。
しかし、どのような理由であれ、税務署は「無申告=納税義務違反」と判断します。
単なる経営者の怠慢と見なされるケースも少なくなく、悪質な場合は脱税として刑事告発されるリスクさえあります。
「赤字だと税額が発生しないため申告の必要がない」と考えがちですが、これは大きな誤解です。
無申告が続くと、過去の赤字を将来の黒字と相殺して節税する「欠損金の繰越控除」の恩恵を受けられなくなります。
結果的に将来の税負担が跳ね上がり、経営の安定性に致命的な影響を及ぼすリスクが高まります。
提出期限の勘違いや、税務署・都道府県税事務所・市町村役場それぞれに提出すべき書類の把握不足など、事務的ミスで無申告になってしまうケースは意外と多いです。
特に、ひとり社長や小規模事業者において、経理担当者が不在の場合によく見られます。
「決算月が変わったのに届出を出していない」「納付書が届かないから申告しなくていいと思った」といった理由は、税務調査では通用しません。
これらのミスを防ぐためには、申告スケジュールの可視化や、早期に専門家のサポートを受けることが有効な手段です。
無申告を続けることで発生する具体的なリスクやデメリットは少なくありません。
特に税金面だけではなく、信用問題や今後の経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
無申告状態のまま放置すると、本税(本来納めるべき税金)に加え、ペナルティとしての追徴課税が課されます。
さらに、社会的信用の失墜という目に見えないダメージも深刻です。
無申告が発覚すると、本来納めるべき税額に加え、以下の追徴課税(附帯税)が課されます(国税通則法)。
| 税金の種類 | 内容 | 税率の目安 |
|---|---|---|
| 無申告加算税 | 期限後に申告した場合のペナルティ | 15% 〜 20% (自主申告なら5%に軽減) |
| 重加算税 | 仮装・隠蔽(脱税の意図)があった場合 | 40% |
| 延滞税 | 納付期限から遅れた日数分かかる利息 | 年利 約2.4% 〜 8.7% (期間により変動) |
税務署から指摘を受ける前に、自ら進んで「期限後申告」を行えば、無申告加算税は5%に軽減されます。
しかし、税務調査の事前通知が来てからでは、この軽減措置は受けられません。
さらに、金額が大きければ重加算税の対象となり、納税額が本来の1.4倍以上に膨れ上がることも珍しくありません。
無申告の状態が2期連続で続くと、青色申告の承認が取り消され、白色申告になります(法人税法第127条)。
青色申告には以下の大きなメリットがあります。
これらを失うことは、実質的な増税を意味します。
取り消しによる税負担の増大は無視できません。
法人としての信用が低下すると、銀行融資の審査で不利になるだけでなく、大手企業や優良企業との取引機会を失う可能性も高まります。
特に金融機関は、直近の「決算書」や「納税証明書」を融資審査の必須資料としています。
無申告の状態では納税証明書が発行されないため、融資を受けることは事実上不可能です。
日本政策金融公庫などの公的融資であっても同様です。
また、建設業の許可更新など、許認可事業においては無申告が事業停止に直結するリスクもあります。
無申告により青色申告が取り消されると、将来の税金を減らす『欠損金の繰越控除』が使えなくなります。
本来なら赤字を最長10年間繰り越せますが、この特典を失うと、黒字転換した際に過去の赤字を相殺できず、多額の現金が流出します。
無申告状態の法人は国税局や税務署の重点的な監視対象(無申告是正)となりやすく、ある日突然、税務調査が入るリスクが高まります。
税務調査では、原則として過去5年分、悪質な場合は7年分まで遡って調査が行われます。
帳簿書類が保存されていない場合、税務署が推計で所得を計算する「推計課税」が行われることがあり、実態よりも高い税額を課される恐れがあります。
さらに、意図的な隠蔽と判断されれば重加算税(40%)が加算され、会社の存続に関わるほどのダメージを受けることになります。
「もう何年も申告していないから、今さら申告するのが怖い」という方もいるでしょう。
しかし、無申告状態からでも期限後申告での対処は可能です。
時効の制度もふまえつつ、適切な方法を理解することが大切です。
国税通則法により、法人税の時効(賦課権の除斥期間)は原則として5年とされています。
しかし、脱税の意図がある(偽りその他不正の行為)とみなされるケースでは7年に延長されます。
「5年逃げ切ればいい」と考えるのは危険です。
税務署はシステム(KSKシステム)を駆使して法人の稼働状況や銀行口座の動きを把握しています。
時効成立直前に調査が入った場合、以下の支払いを一気に求められます。
過去7年分の不足本税
7年分の延滞税(利息)
重加算税(最高40%)
時効に頼るギャンブルをするよりは、できるだけ早く期限後申告を行い、ペナルティを最小限に抑えることが最も経済合理的です。
申告期限を過ぎてから税金を納付する場合、一度に多額の現金が必要になります。
しかし、一括納付が困難な場合には、「換価の猶予」や「納税の猶予」といった制度を利用できる可能性があります。
これらが認められれば、原則1年以内の分割納付が可能になり、延滞税の一部が免除されることもあります。
ただし、単に「忙しくて提出できなかった」という理由だけでは認められません。
災害、盗難、事業の著しい損失など、要件を満たす必要があります。
事前に税務署や税理士へ相談することで、正しい手続きの進め方や申請書の書き方について具体的な情報を確認することができます。
無申告状態を解消するには、過去の帳簿整理から期限後申告まで段階的な対処が必要です。
恐怖心から放置せず、以下のステップを参考に進めていきましょう。
最初に行うべきなのは、未整理の資料をすべて集めることです。
これらを事業年度ごとに分け、会計ソフトに入力します。
「領収書を紛失した」という場合でも、通帳の記録や取引先の証明などから経費計上できる可能性があります。
諦めずに内容を精査し帳簿へ反映させることが、適正な納税額を算出する第一歩です。
資料が整ったら、以下の流れで申告を行います。
税務署から連絡が来る前に自主的に申告することで、無申告加算税は5%に軽減されます。
また、税理士に期限後申告を依頼する際、税理士法第33条の2に基づく「書面添付制度」を活用することは非常に有効です。
この制度は、申告書の作成にあたり税理士が「どの資料を確認し、どのような計算・相談を経て適正に申告書を作成したか」を記載した書面を添付するものです。
いわば、税理士が内容を保証する「品質証明書」の役割を果たします。
書面添付がある場合、税務署は調査の前にまず税理士に対して「意見聴取(ヒアリング)」を行わなければなりません。
ここで税理士が資料に基づき疑問を解消できれば、会社への実地調査そのものが省略されることがあります。
放置よりも、積極的な対応が確実な得策です。
数年分の無申告案件を自力で処理するのは、専門知識のない方には非常に困難です。
税理士などの専門家に相談するメリットは極めて大きいです。
領収書を渡すだけで、記帳から決算書作成まで任せられる。
税務署との交渉や質疑応答を税理士が間に入って対応してくれるため、精神的な負担が激減する。
合法的な範囲で経費を最大限計上し、本税を抑えるアドバイスがもらえる。
自主申告による加算税率の抑制。
正常化後の融資に向けた決算書作成を依頼できる。
多くの会計事務所では、相談を実施しています。
まずは費用の見積もりだけでも取ってみることをおすすめします。
「もう事業をしていないから放置している」「赤字だしこのまま会社を畳みたい」と考え、廃業や休眠を検討する方もいるでしょう。
しかし、正しい手続きを踏まないと無申告状態と同等のリスクを負い続けることになります。
会社を実質的に稼働させていない状態でも、法人登記が残っている以上、税や社会保険料の申告義務は継続します。
これを怠ると、毎年、法人住民税の均等割の納税義務が発生し続け、その未払いが累積していきます。
役員に対する損害賠償請求や、代表者個人の資産差し押さえに発展する場合もあるため、事業を止めるだけでは不十分です。
法人を消滅させるには、「解散確定申告」と「清算確定申告」という2回の特別な申告が必要です。
この一連のプロセスで、未払いの税金を清算しなければ、法人は消滅できません。
正しい手続きを経なければ、いつまでも「滞納者」として扱われ、リスクを抱え続けることになります。
なお、通常清算ができるのは資産超過の場合です。
負債が多く債務超過の場合、特別清算などの方法により会社を閉じます。
また、代表者個人が連帯保証人となっている場合には、会社が法的手続きをとることで、債権者は連帯保証人に対して残債務を一括請求するのが一般的です。
返済が難しい場合には、法人と代表者個人の自己破産手続きも視野に入れる必要があります。早めに弁護士などの専門家へ相談してください。
「廃業にはコスト(登記費用など)がかかるから、とりあえず休眠したい」という場合、税務署や自治体に「異動届出書(休眠届)」を提出します。
しかし、休眠届を出したからといって、過去の無申告分が免除されるわけではありません。
また、休眠中であっても不動産収入があるなど、何らかの所得があれば申告は必要です。
休眠はあくまで「一時停止」に過ぎず、根本的な解決ではないことを理解しておきましょう。
今回の無申告状態を解消できたとしても、再び同じ状況に陥っては意味がありません。
継続的な管理体制の整備が重要です。
現在は、簿記の知識がなくても銀行口座やクレジットカードと連携して自動で帳簿を作成できるクラウド会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)が普及しています。
これらを導入し、日々の「お金の動き」をリアルタイムで把握しましょう。
また、自社での管理が難しい場合は、顧問税理士をつけるのが最も確実です。
月額数万円のコストはかかりますが、無申告加算税や信用毀損のリスクを考えれば、決して高い投資ではありません。
「年一回」の決算のみを依頼するスポット契約に対応している税理士もいます。
決算日、申告期限(決算から2ヶ月後)、納税期限、中間申告の時期など、重要な日程をGoogleカレンダーやタスク管理ツールに入力し、リマインダーを設定しましょう。
こうした「スケジュールの見える化」を徹底することで、社内外での責任分担も明確化し、直前になって慌てることなく、スムーズに申告に向けた準備ができるようになります。
法人の無申告は、追徴課税による金銭的損失に加え、融資停止や取引停止といった経営破綻につながる重大なリスクをもたらします。
無申告の放置は、法人の存続を脅かす最大のリスクです。税務署の指摘を受ける前に自主申告を行うことが、ペナルティを最小限に抑える唯一の手段といえます。
まずは無申告対応の実績がある税理士へ相談し、現状の把握と改善に着手してください。
早めの行動が、将来の経営安定に直結します。
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