
このコラムの要点(目次)
贈与税は、生前に財産を譲り受けたときに課される税金で、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに申告・納税を行うことが原則です。
しかし、「手渡しならバレないだろう」「申告漏れに気づかなかった」「基礎控除額を勘違いしていた」といった理由から、手続きを面倒に感じて放置されるケースも少なくありません。
例えば、自身の預貯金口座に親からお金が振り込まれただけでも、条件を満たせば贈与税の対象です。
無申告のままでいると、のちのち税務調査が入る確率は非常に高く、発覚した場合には本来の税金に加えて重いペナルティ(加算税や延滞税)が科されます。
意図的な隠蔽とみなされれば、最大40%の重加算税が課され、最悪の場合は脱税として刑事罰の対象となることもあり、後々の金銭的・精神的負担は極めて重くなります。
本記事では、贈与税の基本知識から、無申告が発覚するルート、時効の真実、そして税理士など専門家によるサポートの重要性までをわかりやすく解説します。
贈与税の無申告に不安を抱えている方は、早めに現状を評価し、傷が浅いうちに適正な対処を行いましょう。
贈与税は、個人から個人へ無償で財産が移転したときに、財産を受け取った人(受贈者)に対して課される税金です(相続税法第1条の4)。
たとえば、父母や祖父母(直系尊属)から子どもや孫へ現金や土地などの不動産を贈与した場合が典型例ですが、親族間だけでなく友人や知人間の贈与も課税対象となります。
贈与を受けた年の1月1日から12月31日までの財産総額をベースに計算し、受け取った翌年の2月1日から3月15日までに申告書を作成し、税務署へ提出・納税を行います。
基礎控除として年間110万円の非課税枠があるため、1年間に受け取った財産の合計が110万円を超えた部分(課税価格)に対してのみ課税される仕組みです(相続税法第21条の5)。
基本的には受贈者である個人が、申告と納税の義務を負います。
海外に住んでいる場合でも、国籍や過去の居住歴によっては日本の国税庁の管轄となり課税対象となることがあるため、注意が必要です。
贈与税には一定の非課税枠や非課税となる財産がありますが、この範囲を超えてしまう場合は申告が必要になります。
贈与税の申告義務は、1年間(1月1日〜12月31日)に贈与された財産の価額が110万円を超えた場合に発生します。
基礎控除額内に収まる場合は申告の必要はありませんが、複数人から贈与を受けた場合(例:父から100万円、母から100万円、合計200万円など)は合計額で判断するため申告対象になる点に留意が必要です。
また、扶養義務者から受け取る『生活費』や『教育費』は、必要な都度あてられるものであれば非課税です。
ただし、一括で受け取った場合や、その資金で投資・不動産購入をした場合は課税対象となります。
なお、個人からではなく、法人から財産を受け取った場合は贈与税ではなく「所得税(一時所得など)」の対象となります。
個人間の贈与とは税金の計算や手続きが異なるため、誰から受け取ったかを明確にしておくことが適正な申告への第一歩です。
贈与税の無申告は、国税庁(国税局・税務署)の強力な調査網により必ず発覚します。
「手渡しならバレない」「少額なら見つからない」と考えるのは非常に危険です。
税務署は『KSKシステム(国税総合管理システム)』を活用し、個人の収入や資産状況、登記情報などを網羅的に把握しています。
無申告でも一時的にバレない可能性はありますが、数年後や遺産相続のタイミングで過去のお金の動きが洗い出され、一気に発覚することが少なくありません。
いざ発覚した場合、過去にさかのぼって厳しい税務調査が行われ、多額の追徴課税を支払うことになります。
実際、贈与税の実地調査を受けた人の9割以上が申告漏れなどの指摘を受け、加算税・延滞税の支払いをおこなっています。
無申告の件数も、申告漏れなどの非違が見つかった2847件のうち、無申告は2215件、追徴課税108億円となっています(国税庁「令和5事務年度における相続税の調査等の状況」3 贈与税の実地調査の状況)。
不動産を購入したり、法務局で所有権移転の登記を行ったりすると、その情報は税務署に共有されます。
自分の年収に見合わない高額な不動産(例:年収400万円の人が数千万円の家をローンなしで買うなど)を取得した場合、税務署から「お尋ね」という文書が届き、購入資金の出所を尋ねられます。
また、生命保険金の満期受取や、銀行・証券会社を通じた一定金額以上の海外送金なども「法定調書」「国外送金等調書」として税務署に報告されます。
曖昧な回答をして事実を隠そうとすると、後日厳格な税務調査に移行し、より重いペナルティが課されるリスクが高くなります。
贈与税の無申告が最も発覚しやすいのが、遺産を相続した際の税務調査です。
被相続人(亡くなった方)の相続税対策として行われた生前贈与が、実は正しく申告されていなかったというケースが非常に多く見られます。
税務調査官は、亡くなった方の過去数年〜10年程度の預金口座の入出金履歴を徹底的に調べます。
その過程で「生前に不自然な大金の引き出しがある」「子どもの口座へ定期的に資金が移動している」といった事実が見つかると、過去の贈与税の無申告が追及されます。
結果として、相続税だけでなく、過去の贈与税と重いペナルティをダブルで支払うことになります。
無申告が明るみに出ると、本来の贈与税に加え、付帯税という重いペナルティが課されます。
それぞれの税金の特徴と恐ろしさを理解しましょう。
ペナルティを減らす最大の防御策は、税務署から指摘される前に「自主的に申告すること」です。
延滞税(国税通則法第60条)は、納期限(本来の申告期限である3月15日)の翌日から、実際に納付した日までの日数でカウントされる利息にあたる税金です。
原則として、令和8年現在の税率は納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは年2.8%(または特例基準割合)、それ以降は年9.1%(または特例基準割合)という、消費者金融並みの高い金利が日々加算されていきます。
無申告を長期間放置すればするほど雪だるま式に増えるため、1日でも早く納付することが重要です。
贈与税の無申告の時効成立を待つのは、経済的破綻のリスクを抱え込むだけの危険な行為です。
贈与税の時効(除斥期間)は、原則として本来の申告期限から6年、意図的な隠蔽など悪質なケースでは7年に延長されます(相続税法第36条)。
税務署の調査能力は極めて高く、時効直前の6年目や7年目、あるいは相続のタイミングで資金移動を把握され、多額のペナルティを一括徴収されるケースがあります。
毎日不安におびえながら、逃げ切りを狙うのはあまり非現実的ではありません。
贈与税の申告をしていなかった理由として、「贈与ではなく、子どものために親が貯金しておいただけ」と主張するケースがあります。
これが「名義預金」の問題です。
名義預金とは、口座の名義は子どもや孫であっても、実際にお金を出した親や祖父母が通帳や印鑑を管理しており、名義人が自由にお金を使えない状態の預金のことです。
この場合、法律上『贈与は成立していない』とみなされ、全額が相続税の課税対象となります。
つまり、親が亡くなった際、その名義預金はすべて相続財産としてカウントされ、相続税の対象となります。
子どものために良かれと思って長年貯めていたお金が、結果的に相続税を押し上げる要因となり、遺産分割協議において相続人同士のトラブルの火種になることも多々あります。
贈与税には、条件を満たして正しく申告すれば、税負担を大幅に軽減できる制度が複数用意されています。
しかし、これらはすべて「期限内に正しい手続きと申告」をすることが大前提です。
これらの特例は、「無申告状態」で後から税務署に指摘された場合には適用を受けることができません。
過去の贈与について申告していない(または申告額が少なかった)ことに気づいたら、税務署から電話や文書で問合せが来る前に、自身で行動を起こすことが最大の防衛策です。
税務署からの指摘を受けてからでは、ペナルティは重くなる一方です。
「バレるかもしれない」という不安を抱え続けるよりも、速やかに不足分を計算し、必要書類を準備して管轄の税務署へ提出しましょう。
税理士へ依頼する最大のメリットは、合法的な範囲でペナルティ(税負担)を最小限に抑え、精神的負担の大きい税務署への対応をすべて一任できることです。
過去にさかのぼった複雑な延滞税の計算は、素人が正確に行うのは極めて困難です。
自己判断で申告して重加算税を課されるリスクを防ぐためにも、早い段階で税理士などの専門家へ相談してください。
万が一税務調査が入った際も、税理士が立ち会ってくれるため、精神的な負担が大幅に軽減されます。
「専門家の報酬や費用が高いのでは?」と心配する方もいますが、自己流で申告して重加算税を課されたり、利用できたはずの特例を逃したりするデメリットの方が、はるかに高くつきます。
多くの税理士法人では、初回の面談や相談を無料で実施しています。まずは過去の経緯を整理し、メールや電話で相談の問合せをしてみましょう。
贈与税の無申告や相続対策に関して、よくある質問(Q&A)を3つまとめました。
回答: はい、速やかに「期限後申告」を行うべきです。
手渡しであっても贈与税の対象です。
税務署に指摘される前に自主的に申告・納税することで、無申告加算税を5%に抑えることができます。
回答: 社会通念上相当と認められる範囲の結婚費用であれば非課税となる可能性があります。
しかし、そのお金を結婚資金として使わず貯蓄や投資に回した場合は課税対象となります。個別の状況により判断が分かれるため、税理士へ内容をご相談ください。
回答: 令和6年の税制改正により、相続開始前に贈与された財産を相続財産に加算する期間が、従来の「3年」から段階的に「7年」へと延長されました(令和13年以降に完全に7年となります)。
この期間内の贈与については、無申告であれば相続時に確実に発覚し、より厳しい追及を受けることになります。
贈与税の無申告は、「見つかった時のペナルティ」が非常に厳しいのが特徴です。
「いつかバレるのではないか」と怯えながら時効成立を待つことは現実的ではありません。
税務署の調査能力を甘く見て放置すれば、加算税や延滞税といった高額な金銭的代償を支払うだけでなく、遺産相続の際に大切な家族間に亀裂を生む結果になりかねません。
この記事を読んで「もしかして過去のお金のやり取りが贈与にあたるのでは?」と少しでも不安に感じた方は、傷が浅い今のうちに行動を起こしてください。
まずは過去の贈与履歴を確認し、不安があれば迷わず贈与税に強い税理士法人へ相談してください。
専門家のサポートを得て適正な申告を行うことが、無申告リスクを完全に解消し、安心を取り戻す唯一の手段です。
税理士法人羽賀・たちばなには、元国税専門官、元国税審判官の経歴をもつ弁護士・税理士が在籍しています。
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