税務・会計・税金に関するコラム

仮想通貨の脱税はバレる?無申告のリスクと正しい納税ポイント

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弁護士・税理士 橘髙 和芳

たちばな総合法律事務所  代表
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士

 大阪弁護士会所属 52期/登録番号:27404
 近畿税理士会所属 税理士/登録番号:130995

京都大学法学部在学中に司法試験現役合格。弁護士登録後、国税不服審判所(国税審判官 平成24年~同27年)を経て、現職。担当する企業法務案件が「金融・商事判例」など専門誌に掲載された実績。破産管財人業務経験があり、法人破産、個人破産の相談や申立の実績多数。


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弁護士・税理士 山田 純也

たちばな総合法律事務所
税理士法人羽賀・たちばな 代表税理士

 大阪弁護士会所属/登録番号:38530
 近畿税理士会所属 税理士/登録番号:145169

東京国税局(国税専門官)で銀行/証券会社などの税務調査に従事。弁護士資格取得後、大阪国税不服審判所(国税審判官 平成25年~同29年)として国際課税、信託に係る案件、査察関連案件等に従事し、企業内弁護士を経て現職。破産管財人業務経験があり、法人破産、代表者個人の借金問題への対応実績多数。

このコラムの要点(目次)

仮想通貨の脱税はバレる?無申告のリスクと正しい納税ポイント

仮想通貨(暗号資産)の取引で得た利益には税金がかかります。
適切に申告しない場合、過大な追徴課税や資産の差し押さえ、最悪の場合は逮捕されるリスクがあります。
「少しくらいならバレない」という考えは通用しません。

国税庁は近年、重点的に調査を行う事務年度の方針においても、暗号資産に関する調査を重点課題として掲げています。
それにともない、取引所やマイナンバーを通じて広範囲の情報を把握し、暗号資産取引を行う個人や企業を厳しく監視する体制を整えています。

実際に、税務調査で申告漏れを指摘され、多額の追徴課税が課されるケースも珍しくありません。

本記事では、仮想通貨の税金の基本的な仕組みや、申告を怠った場合にどのようなペナルティが科されるのか、また「なぜ脱税がバレるのか」その仕組みを詳しく解説します。

適切な方法で申告し、安心して仮想通貨を運用できるように基礎知識をしっかりと押さえていきましょう。

1. 仮想通貨と税金の基本:なぜ課税対象となるのか

仮想通貨の利益は「雑所得」として課税対象です。

給与所得など他の所得と合算して税額を計算する「総合課税」が適用されるため、利益が大きいほど税率が上がる累進課税となり、住民税(一律10%)と合わせると最大で約55%の税率になります。

仮想通貨は決済手段や投資対象として経済的な価値を持つため、その利益は所得税法上の「所得」と認定されます(所得税法第36条)。

1-1. 仮想通貨の所得区分と雑所得の仕組み

株式投資やFX(国内)の利益が「申告分離課税(一律20.315%)」であるのに対し、仮想通貨の雑所得は以下の特徴があり、税負担が重くなりやすい傾向にあります。

◆ 税制の取り扱い ◆
総合課税
給与所得などと合算されるため、全体の収入が増えるほど税率が上がる。
損益通算の不可
株式や不動産の損失と相殺できない。
損失の繰越控除不可
その年に出た損失を翌年以降の利益と相殺できない(翌年に大きな利益が出ても、前年の赤字は考慮されない)。

扱い方を誤ると控除や税率を間違えやすいのが特徴です。

正確な分類や計算のためにも、取引ごとの損益をしっかりと把握し、必要に応じて税理士などの専門家に相談することが大切です。

1-2. 仮想通貨で利益が発生する主なタイミング

仮想通貨で利益が確定するのは、単に売却して日本円に換金するときだけではありません。

以下のようなタイミングでも、税法上は「利益確定(利確)」とみなされ、取得価額との差額が課税対象となります。

▶ 課税所得が発生する取引一覧
暗号資産を売却(日本円に換金)した場合
保有する仮想通貨(暗号資産)を売却した場合、その譲渡価額と譲渡原価等との差額が所得金額となります。
暗号資産同士の交換を行った場合(通貨間のトレード)
ビットコインでイーサリアムを買うなど、他の銘柄と交換した場合、交換に支払った暗号資産の譲渡に係る所得金額を計算する必要があります。
暗号資産で商品やサービスを購入した場合(商品購入)
保有する仮想通貨(暗号資産)を用いて商品を購入した場合、その暗号資産を譲渡したことになり、譲渡価額と譲渡原価等との差額が所得金額となります。
マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合
これらの活動により暗号資産を取得した場合、その取得時点の価額(時価)が所得金額の計算上の総収入金額(法人税においては益金の額)に算入され、利益が発生します。
暗号資産の分裂(分岐)により取得した暗号資産を売却または使用した時点
暗号資産の分裂(分岐)により新たに誕生した暗号資産を取得した時点では所得は生じませんが、その新たな暗号資産を売却又は使用した時点において所得が生じることになります。
暗号資産を寄附または贈与した場合(個人が移転させた場合)
個人が保有する暗号資産を法人に寄附した場合、寄附をした時における暗号資産の価額(時価)と帳簿価額との差額である譲渡に係る利益の額が生じます。また、個人が暗号資産を贈与した場合にも、贈与の時における暗号資産の価額(時価)を総収入金額に算入することとされています。
暗号資産の信用取引を行い、決済をした場合
暗号資産信用取引の方法により売付け(買付け)を行い、その後に買付け(売付け)をして決済をした場合、その取引の決済の日の属する年分(個人)または事業年度(法人)の所得となります。

特に注意が必要なのが「交換」です。手元に現金が増えていなくても、計算上の利益(所得)が発生しているため、「納税資金がない」という問題に直面するリスクがあります。

所得が生じるポイントを正しく把握することが重要です。

1-3. 確定申告が必要な基準と申告漏れのリスク

会社員など給与所得がある人でも、仮想通貨取引を含む雑所得の合計が年間20万円を超えると確定申告を行う義務があります。

また、学生や主婦などの扶養親族であっても、雑所得が一定金額を超えると、確定申告が必要になるほか、扶養から外れる可能性があります。

給与所得がない学生(扶養内)

仮想通貨の利益を含む年間の「雑所得」が58万円(基礎控除額)を超える場合

アルバイトをしている学生(給与所得がある場合)

アルバイト代以外の所得(仮想通貨の利益など)の合計が、年間20万円を超える場合。

もし申告を怠ると、本来納めるべき税金に加え、延滞税や無申告加算税などのペナルティが科される可能性が十分にあります。

実際に、過去には正しい申告を行わずに大きな追徴税を課された事例も多数報告されており、申告漏れや計算ミスには細心の注意が必要です。

2. 仮想通貨の脱税がバレる3つの理由

「仮想通貨は匿名性が高いからバレない」というイメージは、もはや過去のものです。

実際には国税庁が情報収集体制を大幅に拡充し、IT専門の調査官を配置するなど、さまざまな方法で取引履歴を把握できる仕組みが整いつつあります。

以前は国内外の仮想通貨取引を追跡することは難しいと考えられていましたが、取引所の情報提供やブロックチェーンの分析精度の向上などにより、未申告の利益が当局の調査で発覚するケースが急増しています。

特に1億円を超えるような大きな利益を得ている人(いわゆる「億り人」)だけでなく、数百万〜数千万円規模の利益でも調査対象となる事例が見られます。

海外取引所を利用したり、複数のウォレット間で資金を細かく移動したりする手法(仮装・隠蔽工作)もありますが、国際的な租税条約やデータ共有協定によって、取引内容や送金履歴の情報が当局に届く可能性が高いのが現状です。

正しく申告しない限り、いずれは税務調査の対象となるリスクがあると考えたほうがよいでしょう。

2-1. 取引所の情報提供とマイナンバーによる追跡

国内の仮想通貨交換業者は、利用者の氏名や住所、マイナンバー、取引内容を厳格に管理しています。

税務署には強力な「質問検査権」があり、必要に応じて取引所に対して顧客の取引データの提出を求めることができます。

また、暗号資産交換業者は、特定の条件下(支払調書の提出義務に該当する場合など)で税務署に報告を行います。
マイナンバーと金融機関口座、取引所データが紐付けられれば、資金の動きは容易に特定可能です。

そのため、仮に無申告やごまかしを試みても、取引所の記録と銀行の入出金記録を照合されれば、矛盾点はすぐに発覚します。

2-2. ブロックチェーンの取引履歴解析・AIによるデータ分析

ブロックチェーン上の取引履歴(トランザクション)は全てインターネット上で公表されており、誰でも閲覧可能です。

ここから特定のウォレットアドレスと個人情報(国内取引所のアカウントやSNS情報など)が紐付けられれば、過去の資金移動が全て芋づる式に判明します。

さらに、国税当局はAI(人工知能)を活用したパターン認識技術や、民間のブロックチェーン分析ツールを導入しています。

これにより、大量のトランザクションを高速かつ自動的に分析し、申告データと乖離のある「疑わしい取引」や「脱税の兆候」を効率的に抽出することが可能になりました。

結果として、脱税や不正行為が以前より早期、かつ高精度に見つかるようになっています。

2-3. 海外取引所の取引データ共有と租税条約

大前提として、日本に住んでいる人(居住者)であれば、世界中どこで稼ごうと日本の税制が適用されます。

取引所が海外にあっても、取引による所得が発生すれば日本で確定申告が必要であり、申告を怠れば国内と同様に追徴税や加算税の対象となります。

「海外取引所なら日本の国税局の手が及ばない」というのは大きな誤解です。

日本は多くの国と租税条約を結び、特にCRS(共通報告基準)という枠組みに参加しています。
これにより、加盟国の税務当局間で金融口座情報が自動的に交換される仕組みが稼働しており、近年では海外の暗号資産交換業者もこの対象となるケースが増えています。

たとえ海外で得た利益が口座に残ったままであっても、こうした情報交換によって取引履歴や資産状況が把握されるため、脱税が発覚するリスクは極めて高いと言えます。

さらに、OECDは2023年に暗号資産専用の情報交換枠組みである「CARF(Crypto-Asset Reporting Framework)」を公表しており、各国がこの新たな国際基準の導入に向けて動き出しています。

参照情報
CARF (Crypto-Asset Reporting Framework) の登場

OECDは2023年に、暗号資産専用の情報交換の国際的な枠組みとしてCARF(暗号資産報告枠組み)を公表し、各国にその導入を推奨しています。
これはCRSの暗号資産版とも言えるもので、各国がこの枠組み導入に向けて動いています。

また、税務申告の実務においても注意が必要です。

海外取引所特有の手数料や送金ルール、時差によるレート換算などを正確に把握し、計算ミスや無申告を招かないよう、常に新たな規制情報に注目しておく必要があります。

3. 仮想通貨の税金を申告しない場合に受けるペナルティ

仮想通貨による所得を無申告のまま放置すると、本来納めるべき税金に加え、多額の延滞税や加算税などの経済的負担が発生します。

さらに、悪質な隠蔽工作があったと判断されれば、刑事罰(懲役や罰金)に繋がる可能性もあります。

税務調査には「時効(除斥期間)」が存在しますが、原則5年、悪質な場合は7年まで遡って調査が行われます。
つまり、過去数年分の利益に対して、ある日突然、巨額の請求が来る可能性があります。

3-1. 延滞税・無申告加算税・過少申告加算税の詳細

申告漏れや無申告が発覚した場合、以下の附帯税が課されます。

税務上のペナルティ(加算税・延滞税)

延滞税
納期限(本来の申告期限)の翌日から完納するまでの日数に応じ、利息として課される税金。最高で年14.6%になることもあります。
無申告加算税
期限内に申告しなかった場合に課されるペナルティ。原則、納付すべき税額の15%~20%が加算されます。ただし、税務署の指摘を受ける前に自主的に申告した場合は、税率が5%に軽減される措置があります。
過少申告加算税
申告はしたが、計算誤りなどで税額が少なかった場合に課されます。原則10%~15%です。

これらの税金・加算税は組み合わせて課されるため、予定よりも大幅に納付額が膨らむことも珍しくありません。

3-2. 重加算税や刑事罰に発展するケース

意図的に所得を隠していた(データの改ざん、二重帳簿、仮装など)と認められる場合には、最も重い重加算税(35%〜40%)が適用されます

さらに、極めて悪質な脱税(ほ脱)と判断されれば、査察調査を経て検察庁に告発され、刑事裁判となります。
所得税法違反等の罪で「10年以下の懲役」もしくは「1,000万円以下の罰金」、またはその両方が科されることがあります。

例えば、暗号資産に関する大規模な脱税事件で有罪判決が出た事例があります。

特に金沢地裁での判決など、数億円規模の利益を隠したケースでは、実刑判決や巨額の罰金が言い渡されており、社会的な制裁も受けることになります。

参考判例:金沢地裁の判決(2021年3月31日)の概要

暗号資産取引で得た巨額の利益を隠し、脱税した事件として日本全国初の判例
  1. 事件の事実関係
    • 被告人: 会社役員の男性
    • 利益額: **2017年〜2018年の取引で約1億9,900万円の利益を獲得。**
    • 申告状況: 本来ならば約2億円の所得申告が必要でしたが、わずか「120万円」の利益しかなかったと虚偽の確定申告を行いました。
    • 脱税額: **所得税 約7,400万円。**
  2. 悪質と判断された手口
    単なる「計算ミス」や「申告忘れ」ではなく、以下の行動が「意図的な所得隠し(仮装・隠蔽)」と認定されました。
  3. 判決内容(刑罰)
    金沢地裁は、被告人に対して以下の有罪判決を言い渡しました。
    • 懲役: 1年(執行猶予3年)
    • 罰金: 1,800万円
    報道からの詳細は不明ですが、上記に加え、修正申告の上で当然ながら追徴課税(本来払うべき税金+重加算税+延滞税)として、総額1億円以上の支払いが別途発生しているものと考えられます。

3-3. 追徴課税の具体的な事例とその影響

仮想通貨取引による収益を長期間申告していなかったり、過少に申告していたりする場合、突然大きな追徴課税を求められる可能性があります。

先ほどの判例のように、億単位での追徴課税等の支払いが求められるケースもあります。
一括で支払えない場合でも税金の支払い義務は消えません。

支払いを滞納すると、銀行口座、給与、不動産などの資産が差し押さえられるリスクがあります。
結果として、生活基盤や財産の維持が難しくなり、社会的信用も失うなど、人生に深刻なダメージを受けるおそれがあります。

4. 仮想通貨の正しい納税手順と確定申告の方法

仮想通貨による利益を確実に申告するためには、正確な損益計算と期限内の申告が欠かせません。
必要書類の準備や手続き方法を理解しておきましょう。

まずは年間(1月1日〜12月31日)を通して取引履歴を整理し、いつ、どの取引所で、どれだけの利益や損失が発生したのかを明確にすることが重要です。

特に複数の取引所を利用している場合や、海外取引所とのやりとりがある場合は取引データの管理が煩雑になるため、損益計算ツールなどを活用すると便利です。

税金の申告は通常、翌年の2月16日から3月15日までが期限と定められています。
期限を過ぎてしまうと加算税や延滞税が発生するため、早めの準備が必要です。
仮想通貨のように雑所得が複雑になる場合は、税理士への相談も検討するとよいでしょう。

4-1. 取引履歴の確認と損益計算ツールの活用

仮想通貨の取引履歴は、売買や交換、ウォレット間の移動など多岐にわたります。

以下のポイントに注意して、申告手続きを進めましょう。

申告の準備と計算方法
データ収集
すべての取引所から「年間取引報告書」や取引履歴(CSV/Excel)をダウンロードします。メールの履歴も確認し、漏れがないかチェックします。
計算
個人の場合は原則『総平均法』を用います(届出をしている場合は移動平均法も可)。
※ 法人の場合、期末に保有する暗号資産は原則として「時価評価(時価法)」となり、含み益・含み損を計上する必要があります。

複数の取引所を利用したり、頻繁に取引を行ったりする場合、手計算は現実的ではありません。GtaxやCryptactといった計算サポートツール(一部無料プランあり)を使用するのが一般的です。

これらのツールは、ステーキング報酬やDeFiのトランザクション、暗号資産同士の交換などもまとめて計算できるものが多く、手作業でのミスを減らし正確な申告に近づけられます。

4-2. 確定申告書の作成・提出時の注意点

確定申告書の作成には、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」が便利です。
e-Tax(電子申告)を利用すれば、自宅からスマホやPCで提出が完了します。

入力箇所
雑所得の項目にある「暗号資産」欄に入力します。
添付書類
原則として取引履歴の添付義務はありませんが、計算根拠を示す資料として自身で7年間保存する必要があります。

取引が膨大な場合や計算に自信がない場合は、計算過程のメモを残しておき、税務調査が入った際にどのように損益計算を行ったかを説明できるようにしておくことが望ましいです。
期限内に正しい形で提出すれば、後から修正申告する手間や追徴税に悩まされるリスクを大幅に減らすことができます。

4-3.納税資金の確保

暗号資産の取引で生じる最大のリスクの一つに、「納税資金の確保が困難になること」が挙げられます。

暗号資産の所得計算は、売却(法定通貨への換金)や、他の暗号資産、またはモノやサービスへの交換を行った「決済時点の市場価格」に基づいて行われます。

この仕組みの結果、以下のような事態に陥るケースが多発しています。

暗号資産の納税に関する重要リスク

利益確定後に価格が急落
年末に利益を確定し、年を越して納税期限が来るまでに市場価格が暴落した場合、残った暗号資産の価値だけでは、過去の利益に対する納税額を賄えなくなります。
納税は法定通貨のみ
現行の税制では、暗号資産による納税は認められておらず、必ず日本円などの法定通貨で納付しなければなりません。

したがって、利益が確定した時点で、利益の50%程度(税率によって変動)を目安として、その分の金額をすぐに日本円などの法定通貨に換金し、納税資金として隔離しておくなど、計画的な管理が大切です

修正申告や税務調査によって追徴税額が発生した際、納税資金が確保できず、故意に納付を拒否・遅延すると、単なる延滞では済まないリスクもあります。

悪質な仮装・隠蔽行為と判断された上に納税ができない場合、「所得税法違反」として告発される可能性があります。

5. 仮想通貨で使える節税対策・コツ

仮想通貨による税負担を少しでも軽減するためには、脱税ではなく、法律で認められた正当な方法での「節税」や計画的な取引が重要となります。

仮想通貨の所得は雑所得に含まれるため、株式のような強力な節税策(NISAや申告分離課税)は使えませんが、いくつかのポイントを押さえることで手残りの金額を増やせる可能性があります。

5-1. 同一区分内での損益通算

雑所得は、他の区分の所得(給与所得など)とは損益通算できませんが、同じ雑所得内であれば通算が可能です。

例えば、ビットコインで100万円の利益が出ていても、イーサリアムで50万円の損失(マイナス)が確定していれば、合算して「所得50万円」として申告できます。

年末までに含み損のある保有銘柄を売却して損失を確定させ、利益を圧縮するのも一つです。
また、必要経費の計上も重要です。

5-2. 必要経費の計上

取引手数料だけでなく、以下のような支出が経費として認められる可能性があります。

暗号資産取引に関連する主な経費

  • 仮想通貨関連の書籍・新聞代
  • 有料セミナーの参加費・交通費
  • コンサルティング料
  • 損益計算ツールの利用料
  • 有料オンラインサロン会費(情報収集目的)
  • マイニングPCの購入費・電気代
    ※ PCについて取得価額10万円以上かつ使用可能期間1年以上の場合は減価償却が必要です。

ただし、経費として認められるのは「仮想通貨取引に直接必要である」と客観的に説明できるものに限られます。
領収書や明細はしっかり保管しておきましょう。

5-3.法人化による税負担軽減

利益が1,000万円を超えるような一定の規模が期待できる場合は、法人化(資産管理会社の設立)を検討する価値があります。

法人税の実効税率は約30%〜34%程度であり、個人の最高税率(約55%)と比較してメリットが出る場合があります。

また、法人の場合は欠損金の繰越控除(赤字を翌年以降に持ち越せる)が可能になるなど、税務上の選択肢が広がります。

6. よくある質問:仮想通貨と税金に関するQ&A

仮想通貨の税金について、特によくある疑問をいくつか取り上げ、ポイントをわかりやすく解説します。

Q: 仮想通貨を保有しているだけで税金は発生しますか?

A: 保有しているだけ(含み益の状態)では課税されません。

売却(現金化)、他の暗号資産との交換、商品・サービスの決済など、含み益が実質的に確定したタイミングで課税対象となります。

特に、仮想通貨同士の交換も課税対象となり、現金化していなくても納税義務が発生するため注意が必要です。

Q: 海外取引所での取引は申告しなくてもバレませんか?

A: バレる可能性が非常に高いです。
国際的な情報共有(CRS)や租税条約があり、海外取引所のデータも日本の税務当局に提供される仕組みが強化されています。
「バレない」と高を括って無申告を続けるのは危険です。

Q: 過去の無申告が心配です。今から申告しても間に合いますか?

A: はい、税務署から指摘を受ける前に、自ら進んで「期限後申告」を行えば、無申告加算税が5%に軽減されるなどの措置があります。

放置して税務調査が入るのを待つよりも、一日も早く税理士に問い合わせて適正に処理することを強くおすすめします。

7 まとめ:正しい申告と納税で安心して仮想通貨を運用しよう

仮想通貨の取引から得られる利益は、正しく申告すれば大きなリスクを回避しながら運用を続けることができます。

仮想通貨は今後も新しいサービスや技術進化が見込まれる分野ですが、税制やルールも年々変化しています。
そのため、国税庁の公式サイトや信頼できるメディアで最新の情報をキャッチアップしながら、確定申告の方法をアップデートしていくことが欠かせません。

申告漏れや無申告は、多額の追徴課税や重加算税の対象となり、財産を失うだけでなく、社会的信用まで失う危険を伴う行為です。

「バレたらどうしよう」という悩みを抱えたまま過ごすのは精神的にも良くありません。安心して仮想通貨を投資・運用するためには、正しい知識と適切な税務対応を常に意識し、必要に応じて税理士などの専門家と連携しながら進めるようにしましょう。

税理士法人羽賀・たちばなには、元国税専門官・元国税審判官の経験をもつ弁護士が在籍しています。
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  • 2016年10月 日経MOOK「相続・事業承継プロフェッショナル名鑑」のP84に「税理士法人 羽賀・たちばな」が、P134に「たちばな総合法律事務所」が掲載されました。
  • 弁護士・税理士 橘高和芳が
「フジサンケイビジネスアイ」
に掲載されました
(2015年11月2日(月)27面)
  • 旬刊「経理情報」2016年4月20日号(NO.1444)に「D&O保険の保険料にかかる税務ポイント」を寄稿いたしました。